推し活うちわを作ってみて気づいたこと
推しのコンサートに向けて、うちわ文字を作ろうとしたことはありませんか。SNSで見つけたおしゃれな例をお手本に、同じような色やフォントを選んだつもりなのに、出来上がったものを見ると「なんとなく違う」。文字も色も似せたはずなのに、本家のような可愛さにならない。
こういうモヤモヤを感じたことがある人は、実は多いと思います。理由ははっきりしています。私たちは「可愛い」を感覚でしか捉えていないから、真似するときも感覚に頼ってしまうのです。感覚は、そのままでは人に説明できないし、再現もしづらいものです。
でも「可愛い」は、実はいくつかの要素の組み合わせでできています。色、フォント、余白(レイアウト)。この3つに分けて見ていくと、韓国っぽいデザインの秘密がぐっと見えやすくなります。
色:やさしさと元気を同時に見せる配色
韓国のデザインの色使いには、ある共通点があると言われています。パステルカラーのようなやさしい色と、ビビッドカラーのような元気な色を、あえて同じ画面の中に混ぜて使うという方法です。
たとえるなら、いちごミルクのような淡いピンクのアイスクリームに、真っ赤なチェリーが1粒のっているようなイメージです。全体はやさしい甘さでまとまっているのに、どこか一点だけがぱっと目を引く。この「やさしさ」と「元気」が同じ画面に同居していることが、見た人に「かわいい」と感じさせているのかもしれません。
K-POPのCDジャケットを思い出してみてください。全体は淡い色でまとまっているのに、ロゴやワンポイントだけ鮮やかな色が使われている作品に見覚えはないでしょうか。ターゲットとなる年代に合わせて、明るく鮮やかな色を効果的に使うことが、ポップミュージックのジャケットデザインでは大切にされているとも言われています。
つまり、色をたくさん使えば可愛くなるわけではありません。「やさしい色をベースにして、元気な色を一点だけ足す」という組み合わせ方に、可愛く見えるヒントが隠れているのです。
フォント:大きさの差をはっきりつける
次はフォントです。韓国っぽいデザインを見ていると、文字の大きさに思いきった差がついていることに気づきます。一番伝えたい言葉は画面いっぱいに大きく、添えられる小さな一言はうんと小さく。この差がはっきりしているほど、見た瞬間に「ここを見て」というメッセージが伝わりやすくなります。
うちわ文字で「なんか違う」と感じたとき、実はこの差が足りていないことがよくあります。全部の文字を同じくらいの大きさで並べてしまうと、どこが一番伝えたいところなのか分かりにくくなってしまうのです。逆に言えば、伝えたい言葉をひとつ決めて、それだけを思いきり大きくするだけで、印象はぐっと変わります。
余白:写真の周りにあえて空間をつくる
3つ目は余白、つまりレイアウトの使い方です。韓国発祥のセルフ写真館、いわゆる四つ切りタイプのフォトブース写真を見たことがある人は多いと思います。あの写真は、被写体の周りにたっぷりと白い余白が取られているのが特徴です。情報を詰め込まず、あえて何もない空間を残すことで、写真そのものがより主役として際立って見えるのです。
デザインでも同じことが言えます。文字や写真をぎゅうぎゅうに詰め込むと、どこを見ればいいのか分からなくなります。逆に、伝えたいものの周りにあえて余白を残すと、見る人の目が自然とそこに集まります。「詰め込む」のではなく「引き算する」ことも、可愛く見せるための立派な工夫のひとつなのです。
真似から一歩進むために、好きの理由を言葉にする
ここまで色、フォント、余白の3つを見てきました。大切なのは、これらを「絶対のルール」として覚えることではありません。韓国のデザインが必ずこの通りに作られているわけでもありませんし、可愛いの感じ方は人それぞれです。
大事なのは、自分が「これ好き」と感じたものを見たときに、「なぜ好きなんだろう」と一度立ち止まって考えてみることです。色の組み合わせが気になったのか、文字の大きさの差が気持ちよかったのか、それとも余白の取り方が印象的だったのか。理由を言葉にできると、真似はただのコピーではなく、自分の作品づくりのための材料に変わります。
ミラジェネの授業でも、生徒が「好きなもの」を作品づくりの入り口にする場面を大切にしています。よく使う色や、繰り返し選ぶ雰囲気について、先生が「これが好きなんだね」と決めつけるのではなく、「どうしてこの色を選んだの?」と問いかけながら、本人が自分の好みに気づけるように関わっています。好きの理由が自分の言葉になったとき、それはその子だけのデザインの手がかりになっていきます。
今日からできる「可愛いの分解」チェックリスト
気になったデザインを見つけたら、次の3つを自分に聞いてみてください。
- 色:ベースの色は何色? ワンポイントで使われている色はある?
- フォント:一番大きい文字と一番小さい文字、どれくらい差がある?
- 余白:情報と余白、どちらが多い?
そして最後にもうひとつ。「この中で、自分が一番好きだと感じた部分はどこ?」
3つの要素に分けて、好きな理由をひとつでも言葉にできたら、それはもう立派な観察です。次にデザインを作るとき、その言葉が自分だけのヒントになります。




